ヘアケア業界初!ファイントゥデイが「毛髪と視線の動き」を研究した理由とは?
2024年9月、ファイントゥデイは初の学会発表を第26回日本感性工学会で行いました。
研究内容は、目の動きを追跡する「アイトラッキング技術」を用いて、人の毛髪観察時の視線の動きを研究し、ヘアスタイル全体をどのように評価しているのかを調査したもの。ヘアケア業界では初*の試みです。
R&D本部で基礎研究を担い、今回の研究を推進した森さんと大竹さんに、このテーマに着目した経緯と研究から得た学び、学会での反響や今後の可能性について聞きました。
*2024年9月9日時点(ファイントゥデイ調べ)
研究活動においても「ファイントゥデイらしさ」を追求
―はじめに、今回の学会で発表した「アイトラッキング技術を用いた毛髪全体評価」とはどのような研究なのでしょうか?
森:アイトラッキング技術は、人の瞳孔の動きを検知して視線を追跡する技術で、広告やマーケティングをはじめ、さまざまな分野で活用されています。今回、ヘアケア業界で初めてこの技術を毛髪の全体評価に応用し、視線の動きに関する基礎データの取得と、毛髪評価法の開発に向けた検討および考察を行いました。
大竹:今回の研究は、製品への応用につなげるための基礎研究として、20代の一般女性を調査対象としました。40名の被験者に異なるヘアスタイルを見せ、視線の動きを計測し、「好ましいか」「好ましくないか」という主観評価との関連を調査しました。その結果、「うねり」や「ぎらつき」などの変化をつけた部分に視線が集まること、また、視線速度に変化があることがわかりました。このことから、アイトラッキングを使用することで、その人の潜在的な髪悩みを客観的に評価できるツールとして使用できると考えられます。
―なぜ今回、このテーマを研究しようと考えられたのでしょうか?研究をスタートしたきっかけや、背景にある社会課題、お二人の想いをお聞かせください。
森:以前、ある学会で、メイク前後で人の視線の動きが変化するという報告を聞く機会があり、「視線は嘘をつけない」という点に非常に興味を感じました。しかし、ヘアケア業界において視線の動きに関する研究はまだなく、「毛髪の場合はどうなるのか知りたい」と考えるようになりました。
ファイントゥデイは2021年に創業したばかりです。ゼロから研究開発を進めるにあたり、『ファイントゥデイらしい研究テーマとは何か?』と、常にディスカッションを重ねてきました。
近年、SNSの進化に伴い、特にInstagramやTikTokなどで、ヘアケア製品の使用前後の変化をビジュアルで訴求することが消費者の購買意欲に大きく影響を与えていると言われています。
一方で、ヘアケア製品の評価は、専門家によるウィッグや毛髪の手触りといった部分的な評価が中心となっています。私たち研究者も、髪の毛一本一本の表面を顕微鏡レベルで観察していますが、消費者視点が不足していることが課題でした。そこで、消費者が他者の毛髪のどの部分に注目して「つやつや」や「ぱさぱさ」といった評価をしているのかを明らかにし、消費者視点にフォーカスしたいという思いから、今回の研究がスタートしました。
大竹:お客さま視点で自由に研究テーマを設定できるのは、ファイントゥデイの魅力だと思います。今回の研究をとおして、将来的には当社製品の効果や仕上がりの良さをより説得力のある形でお客さまに示すことで、製品をまだ使ったことがないお客さまには「他者からの印象がこんなに良くなるんだ。使ってみたい!」と思っていただきたいです。そして、いつも当社製品を愛用してくださるお客さまには、「やっぱりこの製品を使い続けていて良かった。これからも美容を頑張ろう!」と、美へのモチベーションが向上するような情報・技術になればと思っています。
どのように毛髪を見ているのか?お客さま視点の傾向を調査
―研究の過程で苦労や難しさを感じた点はありましたか?
大竹:初めての検証が多かったので、仮説立てや事前調査、調査対象者の選定は半年間ほどをかけて念入りに進めていきました。
また、「潜在的な髪悩みとは何か?」といった条件の洗い出しや、毛髪処理と方法の工夫、照明によってツヤの見え方に影響があるので撮影条件の設定なども苦労した部分です。
―調査結果から、驚きや発見、面白さを感じた点があれば教えてください。
大竹:仮説通りのこともあれば、そうでないこともあり、すべての結果が興味深く楽しさを感じました。意外だった結果は、例えば毛先を見ている時間が思ったよりも短かったこと、髪を見ている時間の長さが、髪の良し悪しの判断に必ずしも直結しないことなどです。
嗜好性の伴う検証だったため、データがバラつかないか心配でしたが、調査対象者の選定に力を入れたこともあり、傾向と有意差のある結果が得られたことは特に嬉しかったです。
私は職業柄、人の髪をよく観察してしまうことがあります。髪全体の状態やダメージ具合、髪の毛の太さなど…。自分を含め消費者がどのように毛髪を見ているのか、どんな髪悩みの方がどういう順番で髪を見ているのか。その傾向を今回の調査で知ることができました。
―お二人が日々のお仕事や研究活動において大切にしていることは何でしょうか?
森:普段の生活の中にも、新しいものを生み出すためのヒントは数多くあります。私は研究者として、「課題の本質はどこにあるのか?」「お客さまにとっての価値とは何か?」を常に問い続けることを大切にしています。
また、ヘアケア業界にとどまらず、他業界の技術や知見も研究活動に大いに役立つと考えています。ですので、チームの皆さんには「他業界の展示会などにもぜひ参加してみてください」と伝えています。
大竹:私が心がけているのは、お客さまの視点やニーズを大切にして、製品の良さや魅力をわかりやすく伝えることです。ファイントゥデイは、製品に対するお客さまの声をSNSや口コミなどからダイレクトに聞くことができ、それを研究開発に活かせる環境があるので、やりがいにもつながっています。
今後の研究の成果やデータも、お客さまの美に対する努力を応援できるメッセージとなり、実際に使っていただく時の「楽しみ!」に少しでもつながれば嬉しいです。
―本研究の技術は、製品開発のみならずヘアケア市場や一般生活者へどのようなインパクトを与えるのでしょうか?
森:ヘアスタイル全体の客観的評価が可能になることで、当社の幅広いヘアケア製品の使用による効果を視覚的に可視化でき、お客さまの信頼感の向上につながると考えています。
さらに、従来のアンケート調査では把握しきれなかったお客さまの潜在ニーズを抽出し、それを製品開発に応用することも目指しています。潜在ニーズの可視化により、お客さまに最適な情報を提供することが可能になると考えています。
大竹:他者の視点で髪を評価されることで、「自分の髪はこんな風に見られているんだ」「今まで意識していなかったけど、ここに気を付けてみよう」など、お客さまも新しい気づきを得られますよね。
今回の調査対象は20代女性でしたが、今後の研究で性別やヘアスタイル、バックグランドによっても髪への目線は変わるのでは?とワクワクしています。
初の学会発表。聴講者の反響が確かな手応えに
―9月には初となる学会発表がありました。発表を終えて、率直な感想と反響をお聞かせください。
大竹:発表では聴講者に毛髪の画像を提示して「今、皆さんは髪のどの部分を見ていましたか?」と質問を投げかけるスタイルにしました。すると、想像以上にたくさんの方が挙手してくださり、他者の髪を気にする方、自分の髪がどう見られているか気にする方が増えている印象を受けました。発表後は、「男性のヘアスタイルなどを含め、もっといろいろなヘアスタイルで試験をしてほしい!」など、前向きなご意見をいただきました。
発表中はうなずいている方のお顔も拝見でき、「伝えたいことがきちんと伝わったのだな」「毛髪への関心は私が思っていたよりも高いのだな」と感じました。
―最後に、これからお二人が取り組みたいことなど、今後の展望をお聞かせください。
森:ファイントゥデイのR&D本部の強みは、さまざまな業界から集まった研究員たちにあります。 異なる経験を持つ多様なメンバーのアイデアを掛け合わせることで、「R&D起点のイノベーション創出」を目指し、世界中のお客さまに「素晴らしい今日」をお届けしたいと考えています。
大竹:今回の研究発表をとおして、感性工学にも視覚や聴覚、触覚などさまざまな分野があることを知りました。私たちの研究領域でも「視線に加えて聴覚もダメージレベルの指標にできるのでは?」「髪の表面温度で良し悪しを判断するのは可能か?」など五感を用いた毛髪評価のポテンシャルを感じました。
ファイントゥデイ製品の良さをよりわかりやすく、説得力を持ってお伝えするためにも、今後もさまざまな可能性を検討して、研究に活かせたらと思います。
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