個社では成し得なかった国際物流改革~4社連合の物流パレット共同利用~
ファイントゥデイは、日本パレットレンタル株式会社(以下「JPR」)をはじめとする計4社による協働施策として、日本と中国の輸出入において、物流に用いる国内用レンタルパレットを共同で繰り返し利用する「パレットラウンドユース」を2024年9月から開始しました。
日本国内では、レンタルパレットを業態を超えて循環利用する仕組みがありますが、今回はその仕組みを新たに海外の輸出入にも拡大するものです。これにより、従来行っていた、輸出用の使い捨てパレットへの製品積み替え作業や、そのパレット廃棄がなくなるため、トラックドライバーの不足を背景とした物流2024年問題の解決や、CO2削減にもつながる取り組みです。
この新しい取り組みを、業態の異なる4社でどのように作り上げていったのか。ファイントゥデイとJPRの担当者に話を聞きました。
(以下、敬称略)
この記事はJPR広報のnoteとの連動企画です。「パレットラウンドユース」について詳しく解説した記事「【プレスリリース詳細】国内用レンタルパレットを用いた輸出入の枠組み」もぜひお読みください。
パレットは物流効率化のキーアイテム
――今回、効率的な物流の実現になぜパレットに目をつけたのでしょうか?
ファイントゥデイ(FT)内坂:当社は2023年に、丸紅ロジスティクスさんと共に「コンテナラウンドユース」という取り組みを始めました。これは当社が製品を中国へ海上輸送する際に使ったコンテナを、別企業が日本への製品輸入をする際に使うという共同利用のスキームです。個社単体での海上輸送時に発生していた、空コンテナの回送が解消されるため、CO2削減や2024年問題の解消にも資する取り組みとして社内でも大きな反響がありました。
このような物流の効率化と地球のサステナビリティの双方に貢献する次の施策を検討しており、引き続き丸紅ロジスティクスさんと相談していました。議論を重ねる中で、コンテナ同様に物流には欠かせないパレットに着目したのがきっかけです。
JPR古谷:2024年問題への関心の高まりと共に、パレットへの注目度も上がってきていることを実感しています。パレットの導入により、荷積み・荷降ろしの作業時間短縮、またその作業完了まで待機する時間の短縮を実現でき、トラックドライバーの長時間労働を軽減させることができます。JPRは、国内においては荷主・卸売・小売の各業態をレンタルパレットでつなぎ、各所で空になったパレットをJPRがまとめて回収する共同回収サービスを提供しており、これをもっと拡大させていきたいと考えています。
ただ国際物流となると、海外と日本でパレットのサイズが違うという現状がありました。よってどうしても製品の積み替え作業が発生してしまっており、日本国内と同じパレットを海外でも展開する必要を強く感じていました。
国内用パレットを海外でも。常識にとらわれない発想の転換
――パレットが、物流の効率化を実現するためのキーアイテムという認識合わせがなされていったのですね。それではどのようにして4社連合のスキームを構築していったのでしょうか?
JPR古谷:もし日本国内と同じパレットを海外輸送にも使ったとしても、現状のままでは、海外現地にパレットが溜まっていってしまいます。よって、日本から海外への輸出後に空になったパレットを、今度は日本に戻す必要があり、そのために輸出入の荷主どうしをマッチングさせようという考えが出てきました。
これはコンテナラウンドユースの仕組みがヒントとなり生まれたもので、丸紅ロジスティクスさんからの提案で動き出すことになりました。
ファイントゥデイさんは国内ではJPRのレンタルパレットを利用していましたので、同様にJPRのパレットを利用している、リステリン®などを製造・販売するケンビューさんを引き合わせ、4社でパレットラウンドユースの構想を具体化していきました。
FT内坂:この構想が出てきたとき、国内用のレンタルパレットを海外輸送にも転用できるとは想定していなかったので、正直に言うと最初は本当にできるのか?と思っていました。
ただJPRさんの国内でのレンタルパレット共同回収の仕組みはかなり物流業界では浸透しているものなので、これを海外輸送にも拡大できれば、非常にシームレスな国際物流を実現できるのではと大きな期待を持つようになりました。
――これまでにないスキームを新たに構築していく難しさはありましたか?
FT内坂:輸出作業としてこれまで行っていた、倉庫での海外パレットへの製品積み替えを今後行わなくなるという大きなオペレーションの変更となるため、まずは経営陣やパートナー企業への説明に心を砕きました。この新たな取り組みを導入することの効果だけでなく、想定されるリスクも含めてきちんと説明し、そのうえで納得してもらい実行できるようにしていきました。
その想定リスクですが、最も不安だったのは、パレットの循環を止めることなく稼働できるのかという点でした。当社が中国へ輸出した後、空パレットが滞りなく回収されてケンビューさんの日本への輸入用にスムーズに供給されていくのか、ここが焦点でした。
これに対しては、中国のデポにおける日々のパレット枚数の在庫管理、パレット清掃や破損チェックなどの品質管理について細かなチェックリストが作成されました。デポの運営は丸紅ロジスティクスさんが担っていますが、本番稼働前のトライアルでも中国現地と密に確認し合って支障なく進めていただきました。各社がそれぞれの役割を能動的に、志高く進めていけたのは大きかったです。
社内外から寄せられた大きな反響。今後のステップアップに向けて
――4社が同じ意識を持って実現に向かっていったのですね。9月の本番稼働を迎えて、社内外からどのような反響がありましたか?
JPR古谷:JPRでは海外事業の割合はまだ少ないのですが、今回の取り組みで海外事業への期待は非常に高まっています。レンタルパレットでこのような提案ができるのかという気づきが生まれ、社員の士気も上がりました。
クライアント企業からも、プレスリリースや新聞記事を見たと反響があり、詳細を説明しに伺う機会が増えています。個社では実現が難しいことでも、複数企業が集まれば新しいことができるという点で注目度が高まっていることを実感しています。
――今後、このスキームをさらにステップアップさせていく構想はあるのでしょうか?
FT内坂:今回は日中間を対象とした取り組みですが、他の拠点であるアジア太平洋地域に向けて横展開できると良いと考えています。当社が大切にしている、事業運営と地球のサステナビリティを両立させた取り組みを拡大していくことにより、パーパスでも述べている、世界中の誰もが素晴らしい一日を紡いでいけるよう物流面から支えていきたいです。
JPR古谷:まずは第一弾として、業種を問わずこの取り組みを広げていきたいと考えています。その次に第二弾として、他のエリアにもこのスキームを拡大していきたいです。そのためには、今回スタートさせた日中間のパレットラウンドユースを盤石なものにしていくことが重要と考えています。
【インタビューを終えて】
業態は違っても、2024年問題をはじめとした社会課題を、事業を通じて解決したいという共通の想いで4社が作り上げた「パレットラウンドユース」。一企業だけでは成し得ないことでも、同じ想いを持った企業が集うことで実現に近づくということを実感したインタビューでした。
まだ走り始めたばかりのスキームですが、これからの発展をぜひ見守っていてください。
「パレットラウンドユース」について詳しく解説したJPR広報のnote記事はこちら
参考記事:2023年10月12日付プレスリリース
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