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異業種間のコラボで物流の"2024年問題"に挑む ~3社連携によるコンテナ共同利用の取組み~

物流の「2024年問題」(2024年4月から時間外労働に対する新たな上限規制が導入されることに伴う、トラックドライバー不足)が目前の課題として差し迫る中、企業における物流の重要性はますます高まっています。
社会全体としても、トラックドライバー不足や環境負荷低減といった社会課題に対応するために、より物流を効率化し、サステナブルにしていくことが求められています。
国内外への輸送で多くのトラックを利用する当社グループにとっても、これらの課題は非常に重要なテーマです。
2023年10月、そういった課題の解決への糸口として、丸紅ロジスティクス株式会社(以下「丸紅ロジスティクス」)、ブリヂストンサイクル株式会社(以下「ブリヂストンサイクル」)、ファイントゥデイの3社が連携し、輸出入の工程における「コンテナラウンドユース」の本格運用を開始しました。
丸紅ロジスティクスの仲介により、ブリヂストンサイクル(自転車とその関連商品の製造販売)とファイントゥデイ(パーソナルケア商品の製造販売)という異業種企業の連携が実現した本取組みは、ファイントゥデイにとって製品のサプライチェーンの分野における初めての他社との連携事例となります。
今回、この取組みの実現に至るまでの裏側を、ファイントゥデイの担当者であるSC購買統括本部 SCM部 奥田グループマネージャーに聞きました。

コンテナラウンドユースとは?
コンテナラウンドユースとは、複数の事業者間の連携等により、輸入コンテナの荷卸後、空いたコンテナを輸出用に継続して利用する輸送方式です。コンテナが空の状態で輸送されることを極力少なくすることで、輸送コスト削減だけでなく、輸送距離の削減によるドライバーの拘束時間の短縮、環境負荷低減を同時に実現する取組みです。

コンテナラウンドユースの流れ(一例)


【プロフィール】奥田 真之
SC購買統括本部 SCM部 グループマネージャー(物流グループ)
日系大手物流企業において、国内外全般の物流運営や物流改善を経験。アジア地域での駐在を経て、日本に帰国後、2018年資生堂入社。資生堂においても物流コスト低減やキャパシティーマネジメントなど、一貫して物流の効率化に携わり、2022年にはファイントゥデイに入社。現在も、国内のみならず海外まで広がるサプライチェーンの効率化を主導している。


コンテナラウンドユース実現までの道のり

―まず、この取組みの概要を教えてください。

奥田:丸紅ロジスティクスさんが構築したスキームのもと、中国から自転車の製品・部品を輸入するブリヂストンサイクルさんが使用したコンテナを、ファイントゥデイの物流拠点に直接輸送し、ファイントゥデイがそのまま中国向け製品の輸出に使用するものです。

―どのようなメリットがあるのですか?

奥田:ブリヂストンサイクルさんとファイントゥデイが従来それぞれで行っていた、各社拠点と東京港との間の、空コンテナの返却輸送・送り込み輸送の工程を削減できます。
これにより、
●輸送コストの上昇抑制・改善
●CO2排出量削減:2社で取組みを行わなかった場合に比べ最大24%(年間約160㌧)削減
●トラックドライバーの拘束時間削減:2社で取組みを行わなかった場合に比べ最大30%(年間約6,600時間)削減
といった効果の実現を見込んでいます。

―さまざまなメリットがあるのですね。

奥田:はい。この取組みを推進することで、「①売り手よし(丸紅ロジスティクスさん)、②買い手よし(ブリヂストンサイクルさん、ファイントゥデイ、ひいては小売業者・生活者からの信頼・共感の醸成)、③世間よし(トラックドライバー不足への対応)、④環境よし(CO2削減)」の「4方よし」を実現できると考えています。

―この取組みを始めたきっかけは何だったんですか?

奥田:資生堂からパーソナルケア事業を引き継いで2021年7月に事業開始したファイントゥデイグループの物流基盤は、資生堂時代のものを踏襲している部分が多く存在しています。そのため我々にとって、コストの面でも、品質の面でも、ファイントゥデイにとって最適な物流網を構築することは重要な課題です。
また個人としても、長年物流に携わってきた中で、2024年問題や、環境負荷低減への対策を早急に行わないと、日本の物流が立ち行かなくなるのではという危機感を、身をもって感じてきました。
そんな課題意識を持っていた中、丸紅ロジスティクスさんから、コスト、サステナビリティの両面で優れた今回のスキームをご提案いただいたことがきっかけです。

―提案を聞いた時の印象はいかがでしたか?

奥田:当社にとってまったく新しい試みであり、魅力的な提案だと感じました。コスト面だけでなく、社会課題にアプローチできることも、事業運営とESGの推進を両輪としたサステナブルな経営を追求している当社の方向性にマッチしていると感じました。
今回の提案は、一般的にコンテナラウンドユースを実施する際に障害となる低いマッチング率*を、丸紅ロジスティクスさんの顧客であり、物流拠点同士が近接し、さらには物量も当社と均衡がとれるブリヂストンサイクルさんとマッチさせることで解決しようとしており、その点もユニークで魅力的でした。

*輸入コンテナ輸送と輸出コンテナ輸送の往路・復路を組み合わせる比率

―それでは、あまり迷うことなく導入にこぎつけたんですか?

奥田:いえ、これまで安定的に運用してきたものを大きく変えるわけですから、かなり勇気が必要でした。
しかし、丸紅ロジスティクスさんが、当社の課題にしっかりと向き合ってくださり、一つひとつ運営上の懸念を潰していったことで、安定的な運用が行えると確信し、導入に踏み切りました。

―社内の反応はいかがでしたか?

奥田:役員を含めた社内のメンバーと物流に対する課題意識を共有できていたこともあり、今回の取組みの導入に当たっては、社内から大きな協力を得られました。
大きな運用の変更にもかかわらず快く協力してくれた他部署のメンバーや、背中を押してくれた役員陣の協力なくしては、導入には至りませんでした。

―異業種間の連携だからこそ苦労している点はありますか?

奥田:最も苦労しているのは、需要の予測ですね。コンテナを無駄なく活用するためには、ブリヂストンサイクルさんとの物量のバランスが最も重要になります。最近は景気の変動もあり、当社から中国に輸出する物量の予測には苦労しています。
しかし、そのような運用上の課題も、丸紅ロジスティクスさんが2社と緊密に連携し、豊富なノウハウを生かして粘り強くご調整いただいていることで、可能な限り効率的な運用が行えています。

―今回の取組みを行って得られたことは何でしょうか?

奥田:コストの改善や、サステナビリティ面での進歩はもちろんですが、何より、新しい取組みで成功体験が得られたことが最大の成果ではないかと思います。
これまでの安定した運用を変革するには大きな勇気が必要でしたが、一歩新しい取組みに踏み出し、軌道に乗せられたことで、チーム全体で、今後のさらなるチャレンジに向けて、より前向きな気持ちになれたと感じています。

ファイントゥデイが見据える社会課題解決の未来

―この取組みが今後さらに拡大していく可能性はありますか?

奥田:はい、大いにあると思っています。現在は日本から中国向けに輸出する際の輸送を対象としていますが、中国向けだけでなく、ほかのアジア地域向けの輸送にも広げられると考えていますし、アジア地域から輸出する際の輸送にも応用できると思っています。全社的に水平展開できる取組みだと思います。

―コンテナラウンドユース以外にも、今後取り組んでいきたいことはありますか?

奥田:今後も、さらに効率的な物流網の構築に向けて、さまざまなことに取り組んでいきたいと思っています。繰り返しになりますが、これから先、人手不足によりモノが運べなくなるリスクをひしひしと感じています。重要なポイントは、従来の物流工程の中の無駄な箇所を見つけ、いかによりシンプルで効率的なネットワークを構築できるかだと思います。パートナー企業とうまく手を組むことが重要です。

―1社単独では解決できないことも、パートナーとの連携により解決できるということですね。

奥田:その通りです。もはや、自社の利益だけを考えていては、最適な物流は構築できないと思っています。社会課題の解決も両立しなければ、いずれ行き詰ってしまうことは明らかですし、サステナブルな取組みとは言えません。
これからも、パートナー企業と二人三脚で、さまざまなステークホルダーに価値を提供していきたいですね。