ファイントゥデイのユニークさを武器に、世界で勝つ【トップインタビュー】
2024年7月、資生堂からパーソナルケア事業を引き継いで誕生したファイントゥデイは、創業3周年を迎えました。そこで、経営陣がグループのこれまでの歩みを振り返りながら、ファイントゥデイが目指す未来とそれぞれの想いにフォーカスするトップインタビュー連載をスタートしました。
第4回は副社長執行役員COOの高橋さん。海外事業を中心に、さまざまな改革に取り組んでいます。創業期ならではの会社組織づくりの面白さ、大変さについて、語ってもらいました。
市場変化にアジャイルに対応。中国、APAC事業の構造改革に着手
―ロレアル(外資系企業)からファイントゥデイ(日系グローバル企業)に移られて、どのように視点が変わりましたか?
高橋:まず感じたのは、ファイントゥデイには2つの大きな特徴があるという点です。
一つは、資生堂出身者はもちろん、業界・国籍を問わず様々な企業から参画した社員が織りなす「多様性」。もう一つは、新しい会社を作り上げようという「フロンティアスピリット」に溢れた環境であることです。
私自身、パーソナルケアは前職時代からずっと扱ってきましたので、同じ方向を向いているとは思っていますが、お客さまに価値を伝えることはどういう意味合いなのかを改めて考えなおす機会になりました。ファイントゥデイでは美意識という言葉を使いますが、機能価値と情緒価値を掛け合わせたモノづくり、これを徹底するためには何をすればよいのか、多様なバックグラウンドを持つメンバーとゼロベースで議論をしながら進めています。
―着任以来、COOとしてファイントゥデイを率いてこられました。中心となって進められてきたプロジェクトについて教えてください。
高橋:本当にいろいろなことをしていますが、海外の事業改革で2つの大きなプロジェクトを進めてきました。
一つ目の「中国未来プロジェクト」はとても大きなプロジェクトでした。
中国では従来の高成長市場から、日本や欧米諸国のような安定成長市場に変化する中で、従来のやり方では対応しきれなくなってくることを想定し、2023年2月から約1年かけて、抜本的なビジネスモデルの転換を行いました。
初めの半年は2週間に一度のペースで中国に足を運び、うまく新体制への移行ができるよう、現地メンバーに寄り添い丁寧にサポートしました。日本本社が培ってきた「安定成長市場での勝ち方」を中国側に展開することをはじめ、営業、マーケティングのみならず、IT、物流、ファイナンスなどを含めてバリューチェーンを一体的に捉えられる仕組みの構築を目指しました。中国メンバーはもちろんですが、日本本社メンバーにも多く参画してもらったので、結果として相互理解を深める機会にもなったと思います。
今までのやり方を大きく変えていく負荷の大きいプロジェクトだったので、特に中国の社員には大変な苦労をかけました。まだコロナ禍が続く中、前向きに取り組んでいたメンバーの皆さんは私にとって戦友だと思っています。
その後、新体制が立ち上がってからは、あえて半年間中国へ出張しない期間を設けるなど、なるべく現地に権限移譲し、現地主導で機動的に経営できるようにと意識しています。
とにかく中国の特徴は変化の速さ。お客さまの好みも、チャネル構造も、他の国では考えられないようなスピードで変わっていきます。業界問わず、多くの会社が変わりゆく中国に対してさまざまな工夫をしていると思いますが、当社はかなり早い段階でこれだけ大きな経営改革を行ったため、市場変化の影響を先取りした対応ができたように思います。
―中国以外の地域については、どのような改革を行ったのでしょうか?
中国に続き、APAC(アジア太平洋)地域の事業改革に着手しました。
APACと一括りにしていた事業を、市場成熟度に応じ2つの体制に分離することで、市場成長の伸びしろが大きい地域への展開を強化する体制としました。
2024年4月から体制を切り替えたばかりですが、東アジアは収益性改善に向けていろいろな手を打っています。東南アジアでは、5月に現地のカントリーマネジャーをシンガポールに集めてムーンショットアプローチ(※事業計画に縛られず、大胆な発想に基づくイノベーション創出を目指す)のワークショップを行いました。向こう3年で売上を2倍にするにはどういうやり方があるか、2日間みっちりアイデアを出し合い、そこで出たボトムアップのアイデアを各現地のビジネスから吸い上げ、ファイナンス・マーケティングメンバーに入ってもらいながら、優先順位をつけてやるというプロセスが生まれました。現地からの声を元に本社が機動的に動き、実現に向かうという、とてもファイントゥデイらしい進め方だと思います。
ストレートパンチだけではなく、ジャブも必要。ワンツーパンチを目指しています
―ファイントゥデイには、どのような魅力がありますか?
高橋:私がファイントゥデイに魅力を感じたのは、新しい会社を形作るプロセスに加われること。まさに、スタートアップのような雰囲気に惹かれました。スタートアップの面白さは、既存のやり方が整備されていないことだと思っています。整備されていないところに線路を引いていくとか、仕組みを作っていくとか、作られていないからこそ自由にいろんなことが描ける、そこがやりがいとして一番大きいところだと思っています。
資生堂時代にはできなかった、アジャイルな製品開発を初め、パーソナルケアに適したスピード感やプロセスの最適化を図り、進化を続けています。
―新しい線路を引いていく過程では、どのような大変さややりがいがあったのでしょうか?
高橋:従来の本丸のイノベーションに3~4年かけるスピードでは、これだけ多様化しているお客さまのニーズにカスタマイズするには間に合いません。ボクシングに例えると、本丸の大型イノベーションであるストレートパンチだけではなく、細かな派生製品などのジャブも入れていくことが必要です。
アジャイルな製品開発の最初の事例として、今年、中国のボディケアブランド「KUYURA」より、自然派志向のトレンドに合わせた、新フレグランスのボディソープを発売しました。開発しようと決めてから発売するまでのプロセスを短縮することで、変化の速い中国市場において、生活者が求める香りに対する情緒的なニーズを的確に捉え、好成績を収めることができました。現地主導の経営体制が整っていたことも、成功要因だったと思います。
新しい仕組みを一個一個作るのは、面白いのですがやはり大変で時間もかかり、苦労した点です。ですが、このような事例を重ね、ファイントゥデイらしい、ワンツーパンチが実現できたらいいなと思っています。
ファイントゥデイのユニークさを最大限生かして、世界で勝つために
―今後、ファイントゥデイをどのような会社・組織にされたいですか?また、今後の展望、ビジョンを教えてください。
高橋:ファイントゥデイのユニークさは、“集中”している点にあると考えています。
資生堂時代にはできなかった、ファイントイレタリー/パーソナルケアカテゴリーへの集中、アジア市場への集中。競合他社を見ても、本当の意味でパーソナルケアやアジアにここまで集中しているのはファイントゥデイだけではないかと思います。また、傘下のブランドも注力エリアを絞り、各ブランドの中でもヒーロー・プロダクトに集中した戦略を取っているのは、大きな強みだと思います。
中期経営計画では、いくつかの成長戦略を掲げていますが、その中で私が特に注力しているのは、ファイントゥデイならではの強みを生かして世界で勝つための戦略です。これによって、我々の想いを込めた製品の価値を、より届けたい人にきちんと届けることができるようになると考えています。
一つは、オペレーションの最適化による投資原資の獲得および利益率の向上です。製品の製造からお客さまにお届けするまでの会社全体のコストやプロセスを、ファイントゥデイとしてEnd to End(一気通貫)で最適化することで、まだまだコスト構造の改善余地があると考えています。
二つ目は、現地主導の経営の推進です。アジア各国・地域に強固な販売網を整備できているため、海外売上構成比が高いことはファイントゥデイの強みですが、さらなるローカルファースト、脱日本中心主義で地域のお客さまに根差したビジネスを構築するにはさまざまな課題があります。共通言語、チームの育成、人事制度やITの仕組みなど、課題を一つひとつ検討して進めているところですが、アイデアは本社だけが机上で練るのではなく、現地からボトムアップで提案されるものや、国や地域を超えて展開できるものもあり、関わるすべてのメンバーと共に推進しています。
―最後に、これまで共に頑張ってきた社員へメッセージをお願いします。
高橋:ファイントゥデイ設立から数年しかたっていませんが、その何倍にも感じる濃密な時間を一緒に頑張ってきた社員の皆さんには、感謝の気持ちでいっぱいです。
特に、海外の皆さんにとっては、資生堂という大企業から独り立ちしていく過程で、大変な苦労をかけたと思います。そんな中でも、このような素晴らしい事業成長を継続できているのは、私たちのブランドへの愛情にあふれた非常に優秀な社員の皆さんが、各国・地域の現場にいるからだと思っています。
私が海外現地法人を訪問するときに、必ず聞くようにしているのは「どうして、ファイントゥデイに入ったのか?」で、「新しい会社を作り上げるという、とってもエキサイティングな旅に参加したかったから」という声をよく聞きます。
どうでしょう、この3年間、皆さんが想像したような旅になったでしょうか? きっと、とってもエキサイティングではあるけれども、想像以上に大変な旅路だったというのが正直なところなのではないかと想像します。私自身、まさにそのように感じています。
同時に、これまでの3年間で、新しい会社を立ち上げる段階は一段落。これからは、ホップステップジャンプでいうところの、ステップ。さらなる飛躍にむかって成長していく第二段階に入っていくことになると思っています。ぜひ、これからも「世界中をときめかせるアジアNo.1ファイントイレタリーメーカーになるという」というビジョンにむかって、一緒に楽しく頑張っていきましょう!